Spur流 自家製燻製・手作りスモーカー

燻煙(スモーク)は、囲われた箱の中に木屑と材料を入れて、木屑を熱で燻して煙を出せば良いわけですから、やりかたは色々あります。 市販しているスモーカーを買ってきても、あり合わせの材料で手作りすることもできます。
また、燻製は、基本的に、塩水に漬け込んで乾燥させ、それを燻煙すれば良いわけですから難しくはありません。
私も最初の内や、初めて行う材料の時は、本やインターネットで諸先輩たちのやり方や塩水(燻製ではソミュール液と言います)のレシピを見て、その通り行い、 自分好みの味になるようにスパイスや塩の分量などを加減しながら試行錯誤をしています。

1.基本的な工程
まず、燻製を行うのに必要な手順を覚えましょう。
基本工程概要説明
前処理魚は内臓、血合い、えらなどの傷みやすい部分は取る。
肉は血抜き、筋を取り除くなどの必要があれば処理します。
大きな素材は適当な大きさに切ったり整えたりします。
傷んだ部分や汚れた部分は取り除きます。
塩漬け素材を塩漬けします。
単に塩だけでなくスパイスやお酒、砂糖、醤油などこの配合や方法によってほとんど仕上がりの味が決まります。
乾塩法(ふり塩法)とソミュール法(立て塩法)があります。
塩抜き塩漬けした物を水洗いして塩抜きをします。
必要以上の塩分を取って味を整えたり、匂いをとったり、表面にある腐りやすい物質を取り除いたりします。
風乾素材を風通しのいい日陰で乾かしてやります。
燻煙をする前の最後の行程です、不必要な水分や表面の水分を取ってやります。
表面が少し乾いている方が燻煙がよく付きます。
燻煙木を燻して煙を出し、その成分を材料に添加する事です。目的は香り付け、色付け、燻製独特の味付け、保存効果。

塩漬けで簡単なのは乾塩法ですが、ムラ無く均一に塩を振るのが難しいので、ソミュール法の方が失敗が無いので、私はソミュール法で行っています。

2.燻煙の種類
次に、燻製のやり方の種類と、その違いを見てみましょう。
種類温度燻煙時間主な用途
冷燻法15〜30℃
(平均25度ぐらい)
1〜3週間水分が良く抜け、長期保存を目的とする場合。
生ハムなどは1ヶ月から2ヶ月をかける 物もある。
生ハム、ベーコン、ドライソーセージ、牛タン、スモークサーモンなど
温燻法30〜80℃
(平均60度ぐらい)
2〜12時間表面の水分だけが飛ばされ、中はジューシーな仕上がりになるので、長期保存はできない。
ロースハム、ベーコン、ビーフジャーキー、ソーセージ類など
熱燻法100〜140℃
(平均120度ぐらい)
1〜4時間作ったその日か数日で食べてしまうもの
保存は冷蔵庫で数日

温燻や熱燻を行う時も、最初から温度を上げるのではなく、最初は40〜50℃で1時間ほど行い、その後目的の温度まで上げて行うと良いです。
長期保存が目的の時は冷燻、燻製の香りや味を楽しむだけで短期間で食べてしまう時は温燻や熱燻が良いでしょう。 私はほとんどのものは温燻でやっています。

3.燻煙に使う木の種類と特徴
木(スモークチップ)を変えると色や香りが違ってきます。
淡白な味のもの/臭みのあるもの/特徴的な味のものなど、素材の種類によってチップを選択しましょう。
チップといえば「サクラ」と考える人が多いのですが、私の経験では香りがきつ過ぎて、色も付き過ぎるため、サクラだけではかなり燻製臭いものになってしまいます。
ですから、私は、クルミ、リンゴ、ヒッコリーなどに少しサクラやブナを混ぜて使います。
材料名特徴・使い方写真
スモークウッド木材を細かく粉砕して棒状に固めたもの。
火をつけて、ジワジワ燃やして使います。
長時間で低温の冷燻に便利な物です。
スモークチップ木材を細かく切ったもの。
金属の皿に入れて、下から熱源であぶって燻して煙を出します。
温燻・熱燻向き

木の種類特徴
サクラ香りが強く、肉でもラムやマトンなどくせのある匂いの強いものによく合います。
リンゴ果物の木だけあり甘みのある香りが特徴です。
上品な仕上がりになりあまりくせがありません。
魚やくせのない素材に向いています。
ブナタンニンが多く含まれているため色付けに便利です。
一般には魚介類向いていると言われます。
あまり使うと渋味が出ます。
ナラブナ科の木ですから性質はブナとよく似ています。
魚介類に向いているとされています。タンニンが多く色付きが早い。
ただブナほど(色付けや、渋味)ではないので初心者むけの魚介類のチップ
クルミサクラの次にオールマイティの木。
クルミの木はチップの中では一番堅い木で、ヒッコリーと同じクルミ科の木ですから香りもよくヒッコリー同様に肉、魚どちらにも合います。
ヒッコリー肉類、魚介類全てに合う海外(欧米)のオールマイティのチップです。
ヒッコリーを沢山使うと酸味が出てくるようです。

4.ソミュール液
「1.基本的な工程」の中で、塩漬けには、乾塩法とソミュール法があると言いましたが、乾塩法はうまくやらないと、塩がムラになりますので、私は失敗の少ないソミュール法でやっています。
ソミュール液というのは、基本的には塩水ですが、色々なスパイスなどを入れて味を整えたものです。
塩水の濃度は、海水(約3.5%)よりかなり濃い目の10〜20%にします。これは、500ccの水に塩を50〜100gの割合になります。
私は、濾過器を通して浄化した水道水を沸騰させてから塩やスパイスを入れてさましたものを使っています。
塩の分量は、肉などの場合は多く、魚や玉子は少な目にしています。

スパイスは味を決めるのに重要な役割を果たします。
オレガノ、エシャロット、クローブ、ケーパー、ゴマ、コリアンダー、山椒、セロリ、たまねぎ、パセリ、タイム、ターメリック、ナツメグ、ロージマリー、ローリエ、ミント、マスタード、胡椒など、私が説明するより、お母さん方の方がそれぞれの特徴を良くご存知だと思います。 基本的な考え方は、魚や肉の臭みを中和し、好みの味付けにするためです。
また、肉などを漬ける場合は、タマネギやニンニクのスライスや、みじん切りにしたパセリ、セロリなども一緒に漬け込みます。
隠し味で醤油やタバスコを使う場合もあります。要は工夫とアイデアですね。

今まで色々な割合で試し、味が良かった割合は次のとおりです。
材料/目的砂糖胡椒その他
玉子(10個)500cc30g15g少々醤油=小さじ1
ベーコン300cc30g15g少々醤油=小さじ1
ナツメッグ=少々
ニジマス500cc70g30g少々 
イカ300cc30cc10g少々みりん=大さじ1
鶏のささみなしなしなしなし醤油=200cc
みりん=100cc
酒=大さじ1
タコ700cc50g30gなしみりん=大さじ1

私がいままで作ったものは、こちらをご覧ください。
Spur流燻製玉子の詳細は、こちらをご覧ください。
Spur流中華鍋で作る玉子の燻製簡単レシピは、こちらをご覧ください。
Spur流ベーコンの作り方詳細は、こちらをご覧ください。
5.自作燻製器
燻製器は市販のものを買っても良いし、自分でも作れます。
また、台所や庭にある材料でも簡単にできます。
日本料理の板前さんなどは、鍋やフライパンと金網で簡単にやります。
最初に書いたように、囲われた箱の中に木屑と材料を入れて、木屑を熱で燻して煙を出せば良いわけですから、箱を何で作るかと、熱源をどうするかだけの問題です。
ここでは、専用の燻製器を買わずに、どこの家庭にでもある材料や簡単に買える材料で作る方法を紹介します。
中華鍋スモーカー てんぷらガードスモーカー
中華鍋でなくてもフライパンでも、すき焼き鍋でもよいのですが、アルミ製はダメです。
空焚き状態で使いますので、鉄製で、底が丸く、途中に金網が引っかかる形のものがベストです。 底が丸くない場合や、金網より大きい場合は、金網をコの字に曲げて使います。 この鍋をガスレンジの上に乗せ、火を加減しながら温度調整します。
ダンボールや木で囲うやり方もありますが、低温燻製なら良くても高温燻製の場合は発火することがあるので危険です。
植木鉢に火をつけた炭やマメタンなどを入れて使います。あまり火力を強くせず、上部にも、もう一枚の天ぷらガードを乗せたり、アルミホイールで蓋にし、隙間を作って温度調節をします。 図では省略してありますが、前も天ぷらガードで囲って箱状にします。

中華鍋スモーカーではあまり大きなものはできませんが、燻製玉子、鶏のササミジャーキーなどが簡単に行えます。
てんぷらガードスモーカーでは、金串の上に金網を乗せたり、金串にS字環でぶら下げたりして行いますが、あまり重いものは金串がアルミを破って落ちてきます。
また、魚や肉などの脂が落ちるものは、植木鉢スモーカーで、下のほうにも金串を刺し、アルミホイールを乗せて、落ちた脂が直接チップにかからないようにした方が良いです。

てんぷらガードスモーカーはベランダでもできるし、持ち運びが軽量でキャンプなどで有効です。
台所で行うときは、植木鉢ではなく、フライパンをガスレンジの上に置いて行います。
植木鉢の代わりに、河原の石などを使えば、天ぷらガードとフライパンを持っていき、金串は、現地で拾った枝でも燻製器を作れます。

自宅の庭で行う時は、天ぷらガードの代わりに、レンガを積み上げたりしても良いですね。
人数に応じて窯の大きさを変えられ、簡単に組み立てたり分解したりもできる点がレンガスモーカーの良いところです。

一番下の段より上は前面にも蓋をします。
チップを乗せる板は薄い鉄板です。

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